2022.04.06

修士論文を執筆して 村上和厳(教育・臨床心理専攻 博士課程前期2年 教育分野)

村上和厳「米国ハイスクールのCollege and Career Readinessを目指す教育の質保証-カリフォルニア州に着目して-」

近年、米国教育政策では、学校教育に対して、すべての児童・生徒に「大学とキャリアの準備」をさせることが求められています。また、こうしたことを背景に、研究機関や研究者によって、「College and Career Readiness(以下、CCR)」と呼ばれる大学とキャリアに準備した状態の定義づけがなされています。しかしながら、米国の現状として、すべてのハイスクールの生徒がCCRの状態になっているとは言えず、CCRを目指すハイスクール教育の成果の質を公平性に基づいて保証することが求められています。

こうした状況を踏まえて、私はカリフォルニア州のアカウンタビリティシステムに着目し、いかようにCCRを目指すハイスクール教育の質を保証しようとしているか、その特徴を解明することを研究の目的にしました。同州のアカウンタビリティシステムに着目した理由は、CCRを目指すハイスクール教育を含めた、学校教育の成果等を公平性に基づいて保証しようとしているからです。

この研究の目的を達成するために、以下の2つの課題を設定しました。1つ目は、先行研究から、CCRの定義を再整理し、CCRを目指すハイスクール教育活動を整理することです。本研究では、Conley(2010)とConnectED(2012)のCCRの定義を参考に整理しました。2つ目は、カリフォルニア州のアカウンタビリティシステムが、CCRを目指すハイスクール教育の質をいかように保証しようとしているかを明らかにすることです。この課題については、まずカリフォルニア州のアカウンタビリティシステムの全体像を整理しました。その上で、カリフォルニア州のアカウンタビリティシステムがCCRを目指すハイスクール教育の質をいかように保証しようとしているか、その特徴を明らかにしました。その際、主にカリフォルニア州教育省が刊行している政策文書を中心に分析しました。

本研究を通して、カリフォルニア州の特徴として、①CCRを目指すハイスクール教育のアクセスと成果に着目して、その質を保証していること、②多様な視点からCCRを目指すハイスクール教育の質を保証しようとしていること、③「大学とキャリアの準備ができている状態」の意味が、生徒によって変わってくることの3つが挙げられました。また、こうした特徴を有するカリフォルニア州のアカウンタビリティシステムの結果を見ていくと、人種・生徒グループごとに成果の差があることが分かりました。

以上の結果をまとめると、カリフォルニア州は、アカウンタビリティシステムを通して、多様な視点からCCRを目指すハイスクール教育の成果の質を保証しようとしていることが分かります。しかしながら、現実として、カリフォルニア州では、人種・生徒グループごとに成果の差があります。これらの点を踏まえると、CCRを目指すハイスクール教育の成果の差をなくすための州や学区による効果的な支援の在り方を考察していくことが今後、重要になってくると考えます。