2021.04.07

修士論文の要旨 古里優衣 (教育・臨床心理専攻 博士課程前期2年)

古里優衣 (教育・臨床心理専攻 博士課程前期2年)臨床心理分野

修士論文題目:障害に関する体験と障害イメージ及び障害への無自覚的偏見の関連についての検討―心理系大学院生に焦点を当てて― 

本研究は,心理系大学院生を対象とし,障害に関するイメージを形成するための体験として,どのような体験が重要なのか試行的に検討すること,障害に関する体験と無自覚的偏見の関連について検討することを目的としました。

この目的のために,対象者6名に障害に関するイメージについてのライフラインの記入,障害に関するイメージを形成した体験についての半構造化面接, Filtering Unconscious Matching of Impact Emotionsテスト(以下,FUMIEテスト)を実施しました。

その結果,肯定的な障害イメージを形成する体験として,直接接触体験,情報的な間接接触体験,大学以降の体験の3つが挙げられました。否定的な障害イメージを形成する体験としては,直接接触体験,対人的な間接接触体験,小学校での体験の3つが挙げられました。

また,障害に関する体験と無自覚的偏見の関連については,FUMIEテストの結果から無自覚的障害肯定群(以下,肯定群4名),無自覚的障害否定群(以下,否定群2名)となり、試行的に各群を比較した結果,言語化できる障害に関する体験の数が少ないこと, 障害に関する体験全体に有する否定的な障害イメージを形成する体験の割合が低いこと,障害イメージが変わらない体験が多いことが無自覚的偏見の高さに繋がっていることが示唆されました。

これらの結果から,本研究において障害に関するイメージを形成するための体験として重要なのは,偏りのない障害についての情報に直接・間接的に親密に接触することと,子どもの周りの大人が自らの障害に関する意識や態度を見直していくことであると考えられました。また,障害に関する体験と無自覚的偏見の関連については,障害に関する体験を深化させ自分なりの障害理解を行っていくような体験が,無自覚的偏見の低さに繋がることが示唆されました。