2021.04.02

修士論文の要旨 山形誉貢(教育・臨床心理専攻 博士課程前期2年)

山形誉貢(教育・臨床心理専攻 博士課程前期2年)教育分野

修士論文題目「小学校プログラミング教育の導入過程に関する政策分析研究―IT人材養成から「プログラミング的思考」育成への変化に着目して—」

私は、2020年度から小学校で実施されたプログラミング教育の政策形成過程を分析しました。学校教育の教育内容がいかに決定されるのか、という点に関心がありました。そこで修論では、これまでの教育内容とは異なり、導入された理由や経緯が不透明な小学校プログラミング教育に着目しました。

研究の方法として、まず、各会議体やアクター等の構成に関しては、対象とする会議体を時系列で整理し、各会議体の設置目的および議題を含め、プログラミング教育をどのような文脈で扱おうとしたのか、各会議体それぞれのレベルで捉えました。次に、会議録や答申の内容に関しては、会議録の中で用いられている発言や会議の中で提出された会議資料の中身を整理しました。

本論の内容として、小学校でのプログラミング教育の必修化につながる議論は、首相官邸がIT人材育成・確保の論理から導入を提案したことから始まり、教育再生実行会議等の会議体で議論されていきました。その後、小学校のプログラミング教育の導入決定は首相官邸サイドの意向が強く反映され、「有識者会議」の設置要綱にはコーディングなどのスキルの側面も記載されており、IT人材育成・確保の論理が影響を受けていることが考えられます。また、「有識者会議」での議論の中身は、プログラミング教育のねらいに関して、コーディングなどの側面が薄まり、「プログラミング的思考」の育成が位置づけられるようになりました。その際に、「教育課程全体」や「カリキュラム・マネジメント」など、2017年度版学習指導要領のキーワードに沿って整理されました。

以上のことを踏まえ、小学校プログラミング教育は、「官邸主導」によって導入決定されたが、具体的な教育政策の中身に落とし込まれていく中で、「有識者会議」など文部科学省サイドの影響力が強くなり、最終的には当初の論理とは異なる形で導入されたものであったと指摘できます。そして、この点を象徴的に表しているものは、「プログラミング的思考」がある種の独自の概念として採用され、実施のねらいに位置づけられたことでありました。