2025.04.29
私の最近の研究について 坂本憲治:教育・臨床心理学専攻
私の専門は臨床心理学、キャリアカウンセリングです。青年期・成人期の心理支援を研究しています。近年は、「公認心理師の資格取得後、どのような心理臨床家になるか」という専門職としての個性化プロセスにも関心を持っています。
このことについて、日本統合心理療法学会(2025年3月2日、筑波大学)の場でシンポジウムを企画、話題提供しました。以下に企画趣旨を紹介します。
[シンポジウムテーマ]
統合指向セラピストへの道
-公認心理師時代における臨床訓練を考える―
[シンポジウム企画趣旨]
心理職として初の国家資格が誕生して6年が経過した。2024年には、正規カリキュラムを経た(いわゆるAルート)訓練生が初めて現場に参入した。今後は公認心理師を基盤に「カウンセリング」「心理療法」という具体的な援助技術を、どのように上乗せするかが課題となる。このことは、他の国家資格、例えば柔道整復師が整体の技術を磨くこと、美容師がカットの腕を上げること、調理師が美味しい料理を提供できる料理人になることと似ている。
本シンポジウムでは、現場やクライエントのニーズに応じてユーザーフレンドリーな援助技術を選択・調整することを指向する心理臨床家を、さしあたり「統合指向セラピスト」と称し、公認心理師取得後の臨床訓練について、ざっくばらんに意見交換する場としたい。話題提供者の2名は臨床経験20年程度の統合指向セラピストである。坂本は、大学・大学院の公認心理師養成、卒後スーパービジョンに携わる立場から、山口は私設相談領域に携わる立場から、自身の臨床訓練とともに公認心理師時代における臨床訓練について思うところを述べる。
坂本は、公認心理師の養成機関、昨今の業界事情や訓練生の意識、日本文化をふまえて、①統合指向セラピストの方向性を示す灯台の光、②その道筋をともにするトレーナーの存在(と制度)が、ゆるやかにでも必要と考えている。福島(2016・2018)の温泉モデル・ウナギの育ちモデルに着想を得て「かまぼこ板モデル」を提案する。6年かけて丹念に作り上げられたかまぼこ板に、どのような種類のすり身をいかなる配合で板につけるか。メタファーを用いながら日本におけるセラピストの個性化の一助となる卒後臨床訓練の道筋を提案する。
山口は、公認心理師が私設相談領域において活躍するためには統合指向セラピストの在り方が最適と考えている。私設相談機関には多岐にわたる相談が持ち込まれるがゆえ、単一技法・単一学派だけではクライエントのニーズに応えることができない。ドロップアウトへの配慮も欠かせない。当日は自身の統合指向セラピストとしての訓練経験や私設相談領域ならではの工夫について話題提供し、そこに至るまでに必要と思われる臨床訓練を提案する。