2024.04.02

私の最近の研究について 植上一希:教育・臨床心理専攻

 現在、私が最も重点を置いているのが、専門学校教員のキャリア形成に関する研究です。

 専門学校は高等教育段階における中核的な職業教育機関として発展し、その教育を担う専門学校教員のキャリア形成支援は政策的にも実践的にも重要な課題となっています。しかしながら、その学術的検討はほとんどなされていません。その学術的空白を埋めることを目的として、「職業実践的な教育を担う専門学校教員に必要なキャリア形成とは何か」という問いを中核とした研究を行ってきています。

 この間、専門学校に関わる研究者やシンクタンク等と共同して、専門学校教員に対するインタビュー調査とアンケート調査を実施し、専門学校教員のキャリア形成のデータを収集、現在、その分析を進めてきました[i]。そして、それらの研究をもとに、2023年度からは、専門学校教員のキャリア形成を支援する、専門学校教員研修についての調査や教育プログラム開発も行ってきています[ii]

 こうした研究をふまえて、2024年度から着手するのが、専門学校教員の採用・養成プロセスに関する研究です[ⅲ]。上記の図に示したように、専門学校教員を採用・養成する専門学校(とくに、その採用担当者・養成担当者)という外部アクターへの調査は未着手であり、それらの実態解明ならびに、専門学校教員のキャリア形成に与える影響の検討は、専門学校教員のキャリア形成研究を進めるうえで重要な課題だと考えるからです。「専門学校教員の採用・養成プロセスはどうなっているのか」(「問い1」)、「専門学校教員の採用・養成プロセスは専門学校教員のキャリア形成にいかに影響しているのか」(「問い2」)の2つを研究課題として設定し、インタビュー調査、アンケート調査、既存データの再分析といった研究方法を用いて、研究課題の解明を進めていく予定です。

 

[i]植上一希・佐藤昭宏・丹田桂太「専門学校教員の参入前キャリアの検討 : 学歴・職歴に焦点を当てて」『福岡大学人文論叢』第55巻1号、2023。

植上一希・佐藤昭宏・丹田桂太「専門学校教員の参入過程に関する検討‐専門学校卒教員に焦点を当てて‐」『福岡大学人文論叢』第56巻1号、2024年(掲載予定)。

三菱総合研究所『職業実践専門課程の質保証・向上のための実態調査報告書』2023。

[ii] 文部科学省令和5年度委託事業「職業実践専門課程等を通じた専修学校の質保証・向上の推進事業-教職員の資質能力向上に必要な教職員研修プログラムの構築・普及・推進」

[ⅲ]「専門学校教員の採用・養成プロセスに関する研究」(2024年度基盤研究)